2016.08.04(木)
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エグゼクティブセミナー アパレル産業に新風 異業種コラボで現代社会に挑む若手OB

 各界の最前線で活躍する本学卒業生を招く「エグゼクティブセミナー」が7月7日、中宮キャンパスのマルチメディアホールで開かれた。今回の講師は、2004年に外国語学部スペイン語学科を卒業後、専門商社で繊維関係の業務経験を積んで昨年2月に独立し、株式会社ウィファブリック(WEFABRIK)を設立した福屋剛さん。起業や就職活動について、学生時代の経験や商社マン時代に培った感覚から派生した独特な価値観を中心に語った。

 福屋さんは本学在籍中に40カ国以上を旅行し、スペイン語学科だが、「なぜか、留学先はニューヨークだった」という。「自由で楽しい学生時代だった。関西外大の校風だと思う」と話した。本学の強みは、「語学力ではなく、多様性を受け入れる力にあるのではないか」といい、「海外志向の強い学生が多く、学生生活を通じて知らぬ間に垣根を飛び越える力がつく」と表現した。福屋さん自身、今の会社ではグラフィックデザイナーやシステムエンジニア、アートディレクターなど異業種の人たちとコラボして仕事を進めており、「学生時代に身に付けた力が、生きていると感じる」と語った。

 福屋さんはこの日の講演を、①起業したきっかけ~現状の取り組み ②好きなこと、社会のためになる仕事をするということ ③就職活動を勝ち抜くために ④関西外大の経験が社会で活きたこと――という順に進めた。

 本学卒業後の道筋について、福屋さんは大阪の専門商社に就職し、繊維製品の企画、生産、販売を一貫して行う業務に携わったほか、北米、中国向けの輸出などを担当した。こうした業務を通じて、「大量仕入れ、大量廃棄」の現実にふれ、世界で年間8000万トン、日本国内でも170万トンの繊維製品が廃棄されている事実を肌身で感じた。廃棄された繊維製品は焼却されたり、埋め立てられたりするが、ナイロン、ポリエステルなどは環境問題を引き起こすこともある。毎年変わるファッショントレンドを見越した見込み生産の思惑が外れ、メーカーやブランドが大量の在庫を抱えたり、過剰な品質管理によって正規品とほとんど変わらない“不良品”が頻繁に発生したりするのが、その原因だ。

 そこで福屋さんが思いついたのが、RDFというブランド名で始めた「ゼロクリエーションプロジェクト」。不良品、中古品ではなく未使用の廃材や残糸を利用して、新たな商品を世に送り出す。メードインジャパンで品質がよく、価格は割安。具体例として、福屋さんはイタリアの有名メーカーが発注をキャンセルしたため、大量の商品が宙に浮いた岡山デニムのケースを紹介。これがRDFブランドのエプロンに生まれ変わり、好評だった。
就職活動に向けてユニークなアドバイスを語る福屋剛さん
▲就職活動に向けてユニークなアドバイスを語る福屋剛さん
200人以上が参加したエグゼクティブセミナー
▲200人以上が参加したエグゼクティブセミナー
 福屋さんは就職活動のアドバイスとして、「好きなこと、社会のためになる仕事をするということ」を挙げた。「好きなこと」を見つけるためには、「10以上の項目をノートにリストアップしてみよう」と話した。時間を忘れるくらい熱中することに限り、それを使って人を感動させられる職業とは何かを考え、アルバイトやインターンシップで実践しようと呼びかけた。

 また、「社会のためになること」を見つけるために、身の回りの「不満に思うこと」「改善してほしいこと」「無駄が多いと感じること」を10以上ノートにリストアップすることを提案した。

 就職活動については、SWOT分析が役に立つと語った。SはStrength(強み)、WはWeakness(弱み)、OはOpportunity(機会/チャンス)、TはThreats(脅威)の略。「これを自己分析に当てはめれば、実質的な対策になる」とアドバイスした。そして、周りに共感する人を増やし、大きな影響力を持つようになるために、「ビジョンを明確に示すことによって、台風の目になろう」というたとえ話で講演を締めくくった。

 今回のセミナーには、200人以上の学生が参加。年代が近く、アドバイスも具体的だったため熱心に聴き入り、会場からは質問が相次いだ。
「台風の目になろう」と呼びかける福屋さん
▲「台風の目になろう」と呼びかける福屋さん
会場からは質問が相次いだ
▲会場からは質問が相次いだ