田中 稔郎

  • ルフトハンザドイツ航空会社
  • セントレア中部国際空港 支配人
  • 田中 稔郎
  • 1988年 関西外大ハワイカレッジ 卒業
田中 稔郎

校庭の先に遠浅の海岸が広がるハワイ学舎

 ハワイ、それもワイキキの中心に位置するコンドミニアム(アイランドコロニー)が初めの寄宿先でしたので、オアフ島東部アイナハイナにあるハワイ学舎へは、バス(TheBUS)を利用して通学しました。バイクや車の運転が学則で禁止されていたこともあり、もっぱら公共交通機関が現地での足代わりでした。二階建ての学舎は海岸沿いに建ち、遠浅の海岸が小さな校庭の先に広がっていたのを今でも想い出します。クラブ活動は、現地で”ドラクラ”と呼んでいた記憶があるのですが、演劇部に所属し、在校中にはその集大成としてブロードウェイミュージカル"Anything Goes"で船員の役を演じました。当時の想い出としては、今は兵庫県で教員をしている同期の友人と、度々ワイキキのショッピングセンター(International Shopping Center)の屋上に潜りこみ、階下を行き交う観光客を眺める人間ウォッチングを良くしたのを覚えています。よそよそしい新婚カップルや、どう見ても不釣合いな歳の差カップルなどを色眼鏡で観察するのが結構楽しく、今から思えば、社会勉強の一環だったのかも知れないな、と感じています。
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入学時に寄宿した寮の部屋からの眺め

語学力と自炊力

 在学中は基本的に自炊でしたので、この時の経験が、実は今となっては一番役立っているのかも知れません。中でも、一番のお気に入りメニューはチリコンカーン。当時は、日本でチリパウダーなんて簡単には入手できませんでしたので、お土産で沢山持って帰った記憶があります。後は、サンドウィッチ。アメリカの食パンのサイズは、日本のものに比べると少し小ぶりです。耳付のままハムやチーズ、ビンに入ったリアルマヨネーズをたっぷり塗って挟んだら、ワックスペーパーで包み、ランチに良く持参したのを覚えています。

 もちろん、語学を習得したことが今の仕事をするにあたっては一番役立っていると感じています。社会人になって5年位経った頃、留学時代に一時下宿していたハワイ大学の教授を訪ねました。その時、「トシの英語は学生の時より上手くなったな」と嫌味とも思われる言い方をされたのを覚えています。語学は、単に勉強するだけではなかなか習得するのは難しく(勉強はサボっていましたが)、必要に迫られ仕事(実践)で使うようになって上達するものなのかも知れませんね。

空港は、正に人生の縮図である

 学先で知り合いとなった旅行代理店勤務の知人から、航空会社の職員になると優待航空券が安く手に入る、という魅力的な話を聞かされたのがこの業界に入るきっかけでした。しかし、実際には格安で利用することは可能であるものの、当日に席が空いていなければ利用できないというオチがあり、なかなか予定通りに旅をすることは難しいのが事実です。

 私が就職した時代は、まだ飛行機を利用する事が、何か特別で一般的には華やかに映る業種だったようです。もちろん、私がハワイ学舎へ向かう際もそうでしたが、希望への出発点であり、新婚旅行など人の人生のひとコマに関わることができるサービス業であるとも言えるのですが、基本的には人や物を運ぶ航空輸送業と名乗るのが正解です。しかも、楽しいことばかりでもありません。実際、渡航先で不幸にも亡くなられ棺に入って貨物室で帰国される方、政情不安や内戦から逃れて亡命するために搭乗を企てる人、入国許可が下りず日本の地に足を下ろすことなく折り返し便で送還される人など、空港は、正に人生の縮図であると思うこともあります。
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益々増えると予想される航空旅客需要

昨今では、「だれでも飛行機に乗れる」ようなキャッチフレーズで運航をする格安航空会社の就航がはじまり、今後の航空旅客需要は益々増えると予想されます。また、国の政策により、訪日外国人の目標は2020年までに4,000万人(2016年が約2,000万人)としており、街中で見かける外国人観光客は2倍に増える事になります。かつては出発地であった日本の空港が、ここ数年で目的地(Destination)へと変わりました。今後は、訪日外国人旅客の受け入れに重点を置き、サービス向上を目指したいと考えています。

 今後しばらくは航空輸送の需要増に比例して採用される客室乗務員は増加すると想像されます。しかし、地上職(グランドホステス)に関しては、空港での搭乗手続の簡略化や無人化が進み、採用人員増は期待薄となりそうです。地上職希望の皆さんに関して言えば、在日外資系航空会社は米系大手以外で定期採用をする会社はほぼなく欠員補充採用が基本的となりますので、現役で狙うのは得策ではないのかも知れません。一旦、本邦航空会社へ就職し、力を付けながら転職を考えるなど、就職活動の基本方針を立てた上で、目標に向けて何をなすべきかを考えていかないといけません。就職活動は人生の大きな分岐点です。後悔のないよう精一杯頑張ってください。

掲載:2017年3月