松岡 滋

  • クラシック・ギタリスト
  • 松岡 滋
  • 1986年 外国語学部 英米語学科 卒業
松岡 滋

勉学の傍ら打ち込んだクラブ活動

 子どもの頃から打ち込んできた音楽、さらに、ギターを生業とするのは夢であり、目標でもありました。だから、自分の音楽を聴いてもらいたい、自分の音楽で感動を与えたい、とずっと考えていました。しかし、当時、日本の音楽大学にはギター科がほとんど設置されていなかったこともあり、将来の留学を視野にいれて外大に入学しました。

 そんな状況でしたので、在学中は恥ずかしながら勉強はそこそこで、 寝ても覚めてもクラブ第一の毎日でした。ギター部に所属していたのですが、授業を受けている以外の残りの時間は、全てギターと音楽に費やしていました。 当時は学内にも合宿所があり、ギター部の定期演奏会の前には何日も外大に泊まり込んで集中的に練習をしていたんですが、その期間は、ほぼ24時間ギター漬けでした。思い返すと、その頃が人生の中で一番ギターを弾いた時期だったかもしれません。

 ギター部で部長を2年間務め、その後は文化会本部に入り、総務部長を務めました。その時、「人を教え、育て、まとめる」ことを学び、それは、今の教授活動や合奏の指揮をする時のエネルギーの源になっています。 思い返せば、当時の経験がその後の人生に大いに役立っているので、結果オーライといえるのではないでしょうか。

自分の感性が研ぎ澄まされていくのが判る2年間のフランスでの留学生活

 卒業後、しばらくは国内のコンクールを受けたり著名な音楽家のレッスンを受けたりしていました。そんな中、いくつかのコンクール入賞を機に、フランス・ジョワンヴィル市立音楽院に留学。第二外国語にフランス語を選択していたことが、この時、役立ちました。実は、外大入学時には留学先を決めていなかったので、機運にも恵まれたと思います。

 留学中は、ギターのレッスンや音楽理論の授業など、勉強が中心でしたがフランスやイギリスで演奏する機会を与えて頂き、現地のオーケストラと共演することが出来ました。2年間、同音楽院で勉強し、優等ディプロムを取得して帰国しました。

 僕は語学ではなく音楽留学なので他の方々とは少し事情が違うと思いますが、街の景観は音楽・芸術そのもので、その空間にいるだけで自分の感性が研ぎ澄まされていくのが判りました。毎日の散歩コースだったモンマルトルの丘にはサティの暮らした家、ピカソのアトリエがあった家などが当たり前に存在しますし、街へ下りれば毎晩のように一流音楽家のコンサートが開かれ、学生は格安で聴くことが出来ます。家は石造り。空気は乾いていて楽器そのものの鳴り方も日本とは全く違います。もちろん、たくさん努力をしましたが、そこで生活することで、どんどん自分の感性がヨーロッパのそれに近付くのを実感しました。あらゆることが驚きと感動の毎日でした。

全国各地で演奏会を開催するとともに作曲活動など、新たな分野にチャレンジ

 帰国後はソロのリサイタル、室内楽の演奏会を全国で多数開催。2012年には光栄にも枚方フィルハーモニー管弦楽団とJ.ロドリーゴ作曲のギター協奏曲「ある貴紳のための幻想曲」を共演させて頂きました。また、作曲家としての活動も多くあり、作曲した曲は日本のみならず欧米でも度々演奏されています。2016年11月には作品が現代ギター社より出版されました。
 ところで、クラシックギターの演奏会というと その楽器の特性上、サロンで演奏する機会が多く、大きな会場といってもキャパシティが500位までがほとんどです。しかし先述しましたオーケストラとの共演では1000を越える客席が満員。1000人越えのお客様の拍手を一身に受けることが出来たのは素晴らしく、この上ない幸せな経験でした。

 そして、2015年には、スペインの音楽フェスティバルに招待され、5回の演奏会を開きました。自作品を含むプログラムでしたが、各会場、いずれも現地の方々が熱狂的に受け入れてくださり、とても嬉しい経験となりました。特に、スペインで最も由緒あるコンサートホールのひとつ「アテネオ劇場」で演奏することが出来たことは、大きな財産になりました。

 演奏は、もちろん今後もずっと続けていきたいと思っています。さらに、これと並行して作曲活動があり、教授活動もしているので、それぞれ充実させていきたいです。 ここ数年は、僕の作曲作品が各地で演奏されたり、CDに録音される機会が増えてきましたので、この分野にもさらに力を入れていこうと思っています。これからが本当に楽しみです。
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創り出すものに自分の人生がはっきりと映し出される

 音楽だけでなく、芸術一般に言えることですが、僕たちが創り出すものには自分の人生がはっきりと映し出されます。僕の専門としているクラシック音楽という普遍性のある分野でも、それは明らかに反映されます。 日々の勉学はもちろんのこと、クラブ・サークル活動、アルバイト、そして恋愛など。色んなことに目を向け、毎日を充実させることが、将来に必ず役立つと強く思います。
 現役の方々には、ぜひ、充実した学生生活を送って頂きたいですね。

掲載:2016年12月

松岡 滋 (まつおか しげる)氏 プロフィール

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関西外国語大学卒業後、フランス・ジョワンヴィル市立音楽院に留学し、ギターをロベルトアウセル、音楽理論をフィリップ・ドジェールの両氏に師事。1992年、優等ディプロマを取得。帰国後は全国各地にて演奏活動を行っている。近年は枚方フィルハーモニー管弦楽団と共演しロドリーゴ作曲「ある貴紳のための幻想曲」のソリストを務めるなど室内楽に力を入れ、多数の音楽家と共演。また、作曲家としての活動も多く、2016年11月には、作品が現代ギター社より出版される。その作品は、日本のみならず欧米でも繰り返し演奏されている。

■ 第4回山陰ギターコンクール 第1位
■ 第16回読売新聞社主催日本ギターコンクール 第3位