南 圭祐

  • 劇団四季
  • 舞台俳優
  • 南 圭祐
  • 2008年 外国語学部 英米語学科 卒業
南 圭祐

夢の職業との出会い

 俳優という職業に就きたいと思ったきっかけは、観劇好きだった両親に連れられて中学生の時に見に行った『ライオンキング』でした。この時に味わった感動から、ミュージカルの世界に興味を持つようになりました。人を楽しませたり笑顔にすることが元々好きだったことに加え、体を動かしたり歌うことも好きなこともあり、これこそ夢の仕事だと思いました。
 しかし、この夢の職業を目指すことができたのは、恵まれた多くの人との出会いや、両親や友人、先生方のサポートがあったからこそだと思っています。

多忙を極めた濃密な学生生活

 大学時代は、特に国際交流と俳優になるためのレッスンに力を入れました。授業の合間や放課後の時間を利用して国際交流センターに行ったり、セミナーハウスに半年間滞在したりと、とにかく留学生たちとの積極的な交流を通じて英語の腕試しをする日々を送りました。自分次第で英語に触れる機会はいくらでも作ることができ、留学をしなくても実践的な英語力を身につけることができる環境が整っていたことは、とてもありがたかったですね。IESのクラスに在籍していたこともあり課題も多かったですが、中には、ミュージカルスターになった気持ちでインタビューを英語で受けたりする楽しい授業もありました。もちろん、俳優になるためのレッスンも欠かしませんでした。

 在学中は多忙を極めていたこともあり、どうしたら効率的にスケジュールを組めるのか、ということばかりを考えていました。毎日、朝早く家を出て終電で帰宅する生活が続きました。行き帰りの電車の中でも課題に取り組んでいましたので、睡眠時間は平均で3~4時間程度だったと思います。特に学園祭の直前は、徹夜で踊ってそのまま授業に行ったり…。今では絶対に無理ですね(笑)。

 ダンスを始めたのが高校3年生の時と遅かったこともあり、大学時代は授業のほかにミュージカル専門のスタジオやバレエ教室に通いながら、サークルでダンスや合唱、他大学の器械体操部の練習に参加したりしました。加えて、アルバイトもヒーローショーやゴスペルやバレエ・オペラの客演など、ミュージカルに役立つと思われるものを選んで取り組みました。

海外の文化を学び、色々な人との交流を通じて柔軟に物事を受け入れられるように

 大学4回生の1年間、アメリカのサンノゼ州立大学への留学も経験しました。留学先では、演技やダンス、舞台メイクなどの授業を受講しました。日本でもずっと英語で授業を受けてはいましたが、専門的な内容も多く、授業についていくので必死だったのを覚えています。特に、一人芝居をするという課題があったのですが、日本語でも覚えるのが大変なくらいの台詞を英語で覚えて演じるのは、本当に苦労しました。シェイクスピアの舞台では、アメリカ人の学生の中、留学生は僕だけ。古典英語でしたので、周りが爆笑している中、自分一人がまったく理解できずにぽかんとしたこともありました。しかし、今では得難い良い経験になりました。

 学生時代に海外の文化を学び、色々な人と交流できたおかげで、外国人特有の考え方や見方、ニュアンスを理解できるようになり、柔軟に物事を受け入れられるようになれたと思います。それは、現在の仕事でも日常生活でも大いに役立っています。様々なキャラクターを演じることや、海外が舞台の作品も多いので、経験に基づいて想像の幅を広げることはとても重要です。

集中的にダンスを学ぶためNYへ

 留学プログラム終了後、特別に許可をいただいてそのままNYへ行きました。そこで半年間、集中的にダンスを学んだ後帰国し、劇団四季のオーディションに合格。『ジーザス・クライスト=スーパースター』で四季での初舞台を踏み、『エルコスの祈り』『はだかの王様』等ファミリーミュージカルでは、全国公演に出演しました。その後、『美女と野獣』『マンマ・ミーア!』『クレイジー・フォー・ユー』など大型演目に出演する他、『リトルマーメイド』では日本初演オリジナルキャストを務めました。現在も四季の俳優として、全国各地の公演に出演しています。

刺激的な劇団での毎日

 入団してから2年半は、ファミリーミュージカルで全国公演に出演しました。北は北海道の利尻島から、南は沖縄の石垣島まで、47都道府県のすべてを巡りました。各地には知らない文化があったり、驚くことがいっぱいでした。さらに、『リトルマーメイド』の日本初演公演では、4ケ月の稽古の間、ブロードウェイのスタッフが来日し、直接指導を受けながら舞台を作っていくという貴重な経験ができました。大学で英語を学んでいたので直接対話ができ、英語ならではのニュアンスが直接理解できたので、勉強していて良かったと心から思いました。

 人間は、ただ漫然と同じことを繰り返していると、余裕が出てくる一方、気付かないうちに手の抜き方を覚えてしまい、結果的に最初にできていたことすらできなくなります。進化するためには、常に自分に刺激を与え続けないといけません。つまり、「慣れない」ことが重要です。僕も、さまざまなダンスのレッスンを受けたり、積極的に何でも挑戦することを心掛けています。僕の初心である、人に元気やハピネスを届けられる俳優になれるよう、その研鑽を一生続ける覚悟で、頑張っていきたいです。

観る天国、やる地獄

 この業界は「観る天国、やる地獄」と言われるほど、厳しいところです。僕自身まだまだ道半ばですので、演出家からいただいた、「他人の時計は見るな、自分の時計を信じなさい」という言葉を学生のみなさんに贈りたいと思います。この業界に限らず、日本人はまわりと比べて焦ったり、合わせてしまう方が多いと思います。そうではなく、自分を知り、自分を信じ、自分の理想にむかって努力する。そして、自分の仕事を楽しんでください。そうすれば自然と道を切り拓いていけると思います。お互いに頑張っていきましょう!

掲載:2015年7月