山本 惠美子

  • 東京都大田区立道塚小学校
  • 校長
  • 山本 惠美子
  • 1972年 外国語学部 英米語学科 卒業
山本 惠美子

~「関西外国語大学」で学んだからこそ英語が話せる!~
夢はあきらめない

 「人生ってなんだろう?」「人はどう生きていかなくてはならないのか?」こんなことを考える15歳の多感な中学生だった私は、高校受験にすべて落ちました。初めて社会の厳しさに直面し、いかに努力もせずに甘えていたかがよくわかりました。しかし、そんな不安がいっぱいの時に、中学校担任の石田寿先生は私を見捨てずに必死で高校を探してくれ、何とか2次募集で女子高に入学できました。

 高校に入学してから、「必ず3年間1番をとる」という目標を書いた画用紙を机に置き勉強に頑張りました。有言実行の言葉の通り、やせる思いで勉強し、見事『首席』学年1位の成績を3年間とりました。また、生徒会会長も2年間つとめ、卒業式の日には『成績優秀賞』と『大阪府知事賞』をいただきました。表彰の時、体がぶるぶる震えていたのを今でも昨日のことのように覚えています。
 そこには、自分がそうであったように「人は変わることができる!」人を変える事ができる先生になりたいという夢がありました。志を高くもてば、人間はやることができるということを身をもって体験しました。

 昭和43年の春、桜満開のもと関西外国語大学の入学式を迎え、うきうきした気持ちは最高の気分でした。翌日には、「さあ、今日から英会話を教えてもらえる!」意気揚々として外国の教授の授業を受けました。しかし、なんと、英語で質問されることにクラスの大半の人が英語で答えているではありませんか!私は何も答えられず、ただただ驚きでいっぱいで入学式の次の日は、「これは4年間で卒業できない!」とあせりました。 それからラジオで英語会話を聞き、英語クラブに入り友達と喫茶店に入っては、「じゃ、これからね。」と英語で会話しました。日本語を話すと、確か、罰金としてテーブルに10円を置いていったと思います。お小遣いが減っていくのは、大変でした。また、週末には京都に出かけ、外国人の観光客をつかまえ英語で話しかけ、トライしました。
 しかし、1番はやはり外大の授業のおかげです。当時は「変形文法」がおもしろかったです。その当時からとにかく外国人の先生が多く、専門的に確実に教えてくれる外大の授業だったから、私は英語を楽しく勉強できました。また、放課後は学生ホールで外国人の教授が、毎日当番でいてくださり、「恋愛結婚か:見合い結婚か」というテーマで、2つのチームに分かれディベイティングに一喜一憂したのを覚えています。ここで随分英会話の力がつきました。

 言葉は、国を越え、人と人との心の架け橋であり、互いの気持ちを伝え、理解しあうための手段です。私は、関西外国語大学で生きた英語を学びました。 全く英語が話せなかった私は、4年間、関西外国語大学の恵まれた環境と充実した授業のおかげで、大阪府の教員試験に合格しました。当時合格したのは、私ともう一人男性の学生の2人だけでした。昭和47年4月1日、夢が実現し、大阪府高槻市の教員になれた時は本当にうれしかったです。先代の谷本多加子学長を始め、歴代の学長様の教育への情熱に心より感謝します。

今こそ必要なコミュニケーション能力の育成
~小学校教員コースの解説に感激!~

 平成23年度、新学習指導要領の発足に伴い、小学校5年生・6年生に「外国語活動」の授業が実施され2年目になります。これまでの日本の教育界では、小学校に英語を中心とした外国語を取り扱う授業は初めてのことです。そのため、英語が専門でない小学校の先生方の間には、英語に対する不安や抵抗感が強く、それらを払拭するのは大変であったのも事実です。

 私は、平成17年度に道塚小学校の校長として着任する際に、「近い将来、必ず小学校で英語が扱われる時代が来る」と先を読みました。 会議は英語でやるといったニュースが流れる昨今、すなわち、国際化、情報化の時代に生き、これからの日本を背負っていく子どもたちには、自分の意思をしっかりもち、それを伝える力、そして、相手の考えや意見をしっかり聞く力が求められます。また、日本とは違う言葉や生活・文化を理解し、互いに認め合う心を育成していかなくてはなりません。世界に取り残されないためにも、いろいろな国の人々と英語を通してコミュニケーションできる意欲や態度を育成することが大切です。 そこで、平成25年度に関西外国語大学において、全国で初めて『小学校教員コース』が開設されることは、素晴らしいと思うと同時に関西外大の先見性・国際性に大感激です。今こそ、ここ関西外大で、「小学校英語」の真髄を学び、未来を担う子どもたちを育成できるグローバルな小学校教員が多く誕生することを願っています。
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大田区全体の人材育成に励む
~研究を通して授業力を身につける先生たち!~

 本校では、6年前の平成19年度から教員の校内研究として、「英語活動」(当時の名称)について研究を始め、20年度には、文部科学省から東京都の拠点校に選ばれました。21・22年度に大田区教育委員会の教育研究推進校として、『国際社会に生きる心豊かな子どもの育成』を研究主題として、全教員で研究に取り組んできました。

 19年度当時は、まだ学習指導要領に明確な提示がなく、暗中模索の中での研究でした。今思えば、小学生を前に中学校の前倒しのような授業をやっていたという私自身の反省があります。その後、道塚小学校の研究推進委員会の組織を核とし、校長が自ら助言・指導し、全員の教員の共通理解のもと、計画・実践・課題と改善に力を入れ、授業実践を重ねてきました。研究主任を中心として教員の労もあり、そこから一定の道塚小学校の外国語活動の方向性が見えてきました。

 本校では、低学年で年間8時間・中学年で12時間「ワールドタイム」と名づけ、1年生から児童たちは英語に慣れ親しみ、英語活動を楽しんでいます。そして、5・6年生は35時間『外国語活動』の授業で、自分の考えや意見を英語で伝え、コミュニケーションを楽しんでいます。大田区では、35時間のうち、22時間は担任と外国語活動指導員(外国の先生)で授業を展開していきます。このとき、担任主導型の授業を作り上げていくことに授業の工夫を図っています。
 外国語活動のねらいは、コミュニケーションの素地を育成することにあります。英語を使って表現し、友だちとのコミュニケーションを楽しみながら、国際理解教育に励んでいます。

 私は、「東京都小学校外国語活動推進委員会」の委員を務め、「大田区小学校外国語活動推進委員長」、「大田区教育研究会小学校外国語活動部部長」など、小学校教員に外国語活動の指導に力を尽くしてきました。そこには、道塚小学校の教員の研究成果から発信し、大田区のモデル校としての研究が生かされています。東京都内や八丈島、そして秋田県美郷町など全国の外国語活動の指針になっていると自負しています。 また、大田区教育研究会の「小学校外国語活動部」の区内の小学校教員17名の手により、マニュアル本が出版されます。タイトルは、『小学校外国語活動 これで完璧! "Hi,friends"』~誰でもできる全時間の基礎・基本~(4月発売予定)(株)東洋館出版社(山本も前のページに談話で出ています)

 子どもたちに世界に目を向けさせ、さまざまな人々との交流を通して、国際社会を「生きる力」を身につけさせていくという大きな夢があります。

掲載:2013年3月