河田 知之

  • イビデン株式会社
  • イビデンヨーロッパ シュツットガルト支店長
  • 河田 知之
  • 1991年 外国語学部 英米語学科 卒業
河田 知之

「体ばかり鍛えていないで頭を鍛えろ」

 学生時代はボディビル部の主将を務めていたこともあり、勘違いして粋がっていた時期もありました。しかし、フランス人の留学生の入部をきっかけに、仏語の高木先生、その飲み仲間(笑)である塩地先生と親しくさせていただくことになりました。そんな先生方に、当時の粋がっていた私はこてんぱんに打ちのめされ、「体ばかり鍛えていないで頭を鍛えろ」と教えられます。それからは、研究室に入り浸っては宗教・哲学の課外授業(説教!?)を受けていました。そんな塩地先生とは、今はなんとFB友達です。

 また、学生生活にずっと行っていたのが、その時々にいる留学生との交流です。国際交流課の横にあった「松風荘」というおんぼろの寮におりましたので、前を通りかかる留学生となんだかんだと話しをしたり、近くにあるセミナーハウスに用もなく遊びに行ったり(笑)。後は、第二外国語のフランス語を3年、4年も選択科目として取り、フランスに語学研修にも行って仏語検定3級を取りました。

学生時代読んだ本の内容の貯金で、会社人生を送っているようなものです。

 私の場合、1、2回生で取れるだけの必修科目と一般教養をすべて履修してしまったので、3、4回生は週休3日の生活でした。部活だけは毎日行って、みたいな(笑)。ですから、本はよく読みました。宗教・哲学・思想のような本です。今は読む気にすらならないので、あの頃読んでおいてよかったな、と感じています。当時読んだ本の内容の貯金で、会社人生を送っているようなものです。

英語スピーチが営業部長の目に留まり海外営業への道へ

 漠然と英語の専門性だけで生きていく(例えば通訳や英語教師)には相当な厳しさがあるということを自覚していましたので、業界を問わず英語能力を必要としている職や英語がより活きる職に就こうと考えていました。就職活動の時、地元にあるイビデンが海外展開を行っていくということが書かれていましたので、「まあ、一度受けてみるか」という軽い気持ちで受けたのが運のつきでした。

 イビデンに入社後は、電子部品の国内営業マンとしてスタートしました。ある行事で営業部長が同席する場での英語スピーチをする機会があり、それが目に留まってすぐに海外営業に異動となりました。東南アジア担当、北米担当を経て、オランダに赴任となりました。海外要員として北米出向の予定だったのに、オランダで欠員が出たため急遽オランダ赴任となったのですが、そこで今の家内(オランダ国籍のインドネシア人)と知り合い、3人の娘に恵まれたわけですから、運命というのは不思議なものだと思います。その後、日本に帰任し、セラミック製品の部署へ異動。2年後には、ディーゼル乗用車向け排ガス浄化システムの主戦場であるドイツへ2度目の赴任をし、現在に至ります。
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海外赴任して良かったこと…。

 海外に赴任していて良かったこと、それは、会社の上層部に名前と顔が覚えられることです。普段直接会話を交わす機会のない会長・社長といった人たちが現地をしばしば訪れます。そういう人たちとざっくばらんに話をしているうちに親しくなるわけです。オランダの赴任後、日本で新しい部署に配属された矢先にその部署に来ていた当時の会長と社長に「おお~河田君、帰って来てたか!」と気安く声をかけられ、回りの人が「今度来た河田さんて何者?」とびっくりされたことがあります(笑)。

 また、この度、急遽本社への帰国が決まり、この6月に就任する新社長の社長秘書に抜擢されました。

本当の国際企業にしたい

 海外、特にオランダやドイツに長く居た経験から、現地での仕事の進め方には素直に見習うべき点が多々あり、それを、少しづつでも社内に浸透させていきたいと思っています。また、私たちの世代のように海外経験を積んだものが経営幹部となり、現地法人のナショナルスタッフの幹部に対し、日本から直接英語で指示を出したり議論を交わせるような、本当の国際企業にしたいという思いがあります。

母国である日本の伝統・文化に精通していることの重要性

 自分の経験から、外大に来る人の多くは海外に興味があり、外に目が向いていることが多いかと思います。しかし、海外に長く居ると、いかに母国である日本の伝統・文化に精通しているかということの重要性に気づかされます。そういう意味では、在学生の皆さんには、武道とか茶華道とか書道とか、そういう日本的なものを社会に出る前に身に付けておかれることを強くお奨めします。

掲載:2017年5月
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