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黒田 久一

  • フルックスグループ 代表取締役社長
    一般社団法人 日本惣菜協会会長
  • 黒田 久一
  • 1982年 外国語学部・スペイン語学科 卒業
黒田 久一

青果業界の変革を目指して

昔から変わらない青果業界に変革を起こしたい。その思いを胸に、父が経営する三晃青果株式会社(現在のフルックスグループ)に入社しました。
当時の青果業は卸売市場での競り取引が中心で、職人の経験と直感に依存する世界でした。そのうえ、競りにおける目利きの技術や駆け引きの戦略を次世代に引き継ぐ教育システムは全く整備されておらず、ましてや新卒採用も行われていないのが実情だったのです。そうした青果業界に新風を吹き込むべく、まず自社の制度改革に着手。新卒採用の制度化や経営計画の策定を行い、一般企業では当たり前とされている仕組みや取り組みを、一つひとつ着実に導入していきました。現在では、社内研修や現場視察の実施、オンラインセミナーによる人材教育にも注力し、より一層フルックスグループのノウハウを共有しやすい環境づくりを実現しています。

大学時代の経験と学び——好奇心という原動力

今でこそ青果業や加工販売業を手掛ける企業を経営していますが、学生時代の私の興味は全く違う方向を向いていました。当時の私は海外に強い憧れを抱いており、特にスペイン語の勉強に夢中でした。きっかけは、1年次に受講した「スペイン概論」。授業の面白さに刺激され、スペインに対して強い好奇心を持つようになりました。実際に現地を訪れ、スペイン語を使ってみたいという気持ちも高まり、勉強にのめり込んでいました。
通学時も電車に揺られながら単語を暗記したり、旅行記を読んで次の長期休みの旅行計画を立てたり。単に良い成績を取ることやスキルアップだけを目的に学んでいたわけではなく、ただただ湧き上がる好奇心に身を任せていたのです。

好奇心のままに、日本を飛び出した一人のバックパッカー

無我夢中でスペイン語を学ぶうちに、「海外を放浪したい」という気持ちは日に日に強くなっていきました。現地で自分自身のスペイン語を試してみたいという強い好奇心。そして、当時創刊から間もなかった「地球の歩き方」という心強い旅のお供の存在に背中を押され、ついに私はバックパッカーとして23ヵ国を巡る旅に出ることになるのです。
しかし、入念に旅行の計画を立て旅に出たものの、物事はそう計画通りには運びません。想像もし得なかったさまざまなハプニングが待ち受けていました。
最も印象に残っているのは、1981年2月のこと。私がマドリードに滞在しているまさにそのときに、軍の一部が国会を占拠するクーデター事件が発生。その夜には戒厳令が敷かれる事態にまで発展し、緊張感で眠れぬ一夜を過ごしました。最終的にこのクーデターは失敗に終わりましたが、クーデターが鎮圧されたのも束の間、翌日に「民主主義を堅持」を掲げる大規模なデモがスペイン各地で勃発。私もそのデモに身を投じました。その際、偶然にも私自身が写り込んだ写真が現地新聞に掲載されたのです。その出来事は、今でも忘れられない旅の思い出として、私の胸に深く刻まれています。
また、当時はインターネットが普及しておらず、現在のようなデジタルでの情報収集ではなく、アナログな手法を取らざるを得ませんでした。地図や雑誌、現地の人々とのコミュニケーションなど、自らの頭と足をフル回転させて情報を集めながら旅をするワクワク感は今でも昨日のことのように思い出されます。
旅先でのさまざまなハプニングを乗り越えた経験は、仕事をする中でも私を助けてくれています。日々の意思決定の連続の中で、迅速に計画を立案し、一つひとつ課題を解決する。それはまさに、会社経営における重要なプロセスに他なりません。バックパッカーとして世界を旅した日々が、現在の私とフルックスグループを形作る重要な要素の一つだと実感しています。

現在に繋がる社会人としての第一歩

大学卒業後は、イトーヨーカドーグループ(現在のセブン&アイ・グループ)のデニーズジャパンに入社。アメリカ最大手のファミリーレストランチェーンであったデニーズでは、当時からすでに完成度の高いマニュアルが整備されており、誰が携わっても高品質な商品を提供する仕組みが確立されていました。さらには、必要な人数分の食材とレシピがセットになっているミールキットのようなサービスまで展開されていたのです。こういったデニーズの先進的な取り組みは、私のインスピレーションを大いに刺激してくれました。
副店長というポジションで現場の最前線に立ち、レストランビジネスについて学びながら一生懸命働く日々。そこで得た知見や経験が、フルックスグループのビジネスの土台を作る第一歩になりました。

フルックスグループが目指す未来

フルックスグループは2030年に向けた中期経営ビジョン【FRUX2030】を掲げ、売上高300億円、経営利益15億円を目指しています。常に夢と希望を抱ける会社として成長させていきたい。そして、ただ利益追求を行うだけでなく、社会とのつながりも大切にしながら「経済性と社会性を両立した日本一働きたい八百屋」になることを目標に日々奔走しています。

これから同じ業界で活躍しようとしている方へのメッセージ

大切なのは、「大いなる好奇心」を持つことです。対象は何であれ、好奇心が湧けば自然と夢中になる。没頭できる。私の場合、スペイン語に対する好奇心がきっかけとなり、非常に充実した大学生活を送ることが出来ました。皆さんも学業や仕事において、湧き上がる好奇心に身を委ね、さまざまなことに挑戦してください。

掲載:2026年6月